リバブレーションチャンバーについて
電子機器やシステムからの放射妨害波の放射エミッション試験や、放射妨害波に対する電磁耐性の放射イミュニティ試験のEMC試験用途に使用されます。
都市部の電磁環境を模擬できるため、近年の4G、5Gの通信システムや、自動走行、コネクテッドなどで重要となる車載ネットワークシステムに対して、信頼性の高いEMC試験が実施できます。
新たなEMC規格の制定や改定により、10KHzから40GHz超のEMC試験への拡張も検討されいます。
リバブレーションチャンバーの原理と利点
シールドルームは、その寸法に基づく複数の固有モード(共振現象)が発生し、これら複数の固有モードがシールドルーム内の電界分布に大きく寄与します。
これは、音楽の音響にも見られる現象で、部屋の壁を構成する材料が音響特性に影響を与えるのと同様に、シールドルームの壁材料も内部の電界に大きく寄与することになります。
スターラの役割は、統計的に均一な電磁場を生成させることです。また、Working Volumeとは、統計的に均一な電磁場が得られる領域を表します。
ここで、統計的に均一な電磁場とは、空間的な均一、かつ、偏波的な均一を指します。スターラの羽根などの回転プロセスによる統計的な均一性は、放射イミュニティ試験において非常に有用であることは明らかです。
リバブレーションチャンバー内の位置や向きに関係なく統計的に均一な電界を、供試機器(DUTまたはEUT)に照射できるためです。
また、リバブレーションチャンバーによる放射エミッション試験(特にGHz帯)においても、この共振現象とスターラの羽根の回転プロセスは絶大な効果を発揮します。電波暗室では供試機器を回転させ、受信アンテナを上下操作することにより最大放射ノイズを捉える必要があり、波長の短いGHz帯では測定ポイントは増大し、測定時間が増加します。
一方、リバブレーションチャンバーでは、共振現象を利用することから最大放射ノイズを捉える感度が良く、スターラの羽根の回転プロセスのみで測定が完了するため、測定時間が大幅に短縮します。
リバブレーションチャンバーの撹拌方式
リバブレーションチャンバーにおける統計的に均一な電磁場を生成させる撹拌方式には、大きく3つの方式があります。前述の羽根の回転によるもの、その他に壁面の移動によるもの、壁面自体が柔軟な金網状テントで、送風など壁面の振動によるものがあります。
リバブレーションチャンバーの金属壁面
シールドルームを構成する壁材料は、導電率の値が無限の完全導体が理想ですが、実際の壁材料の導電率は有限であり、シールドルーム内の電磁波の伝送には減衰が伴います。
壁材料の選定は重要であり、導電率の値が大きなCuやAlが適用されています。FeはMHz帯で大きな透磁率を持つことから電磁波の減衰があり、表面にZnやAlめっきなどを施した鋼板(周波数帯によってはめっき層の厚さに注意)が良いとされています。
リバブレーションチャンバーのその他情報
リバブレーションチャンバーにおける統計的に均一な電磁場は、スターラの回転ステップ数とWorking Volume内の測定ポイント数を増やすことにより改善することが判明しています。
この統計的に均一な電磁場の概念は、オープンサイトや電波暗室などの決定論的な均一な電磁場の概念とは異なります。この概念を十分に理解頂き、多くの利点があるリバブレーションチャンバーを活用して頂ければと考えます。